自分のものにするやり方

 

誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)

誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち (ハヤカワ文庫 NF)

 

 

人から読み終わった本の感想を聞くのもよいが、積ん読になっている本や、読んでる最中の本について語ってもらうというのも、面白い。
今日は馴染みの古書店店主が「現代において音楽を聴く方法」とからめて、上記の本の紹介をしてくれた。


自分はモノにこだわるタイプだし、きっとCDを買い続けるんだろうと思っていたが、ついに定額配信サービスを契約してみたという。

「モノ」としてのCDや本が、電子的な形式のものに移行していく時代において、人々はどうやって音楽を聴くようになっているのだろうか。
本の世界も他人事じゃない、と感じるような内容らしい。

確かに、お気に入りのアーティストの新作アルバムを発売日当日(もしくは前日)に、足を運んで買いに行った時代もあったのです。
ダウンロード時代に信じられない向きもあるかもしれない。

「定額で聴き放題で、聴いた分だけそのアーティストの元に還元されるらしい」

これを聞いて、この店主氏が配信サービスにトライしたのは、CD自体を制作することが難しい時代にどうしたらアーティストの支援になるのかと考えてのことではないかと感じた。

自分は、これまでポータブルの再生機器で交通機関での移動中に聴くことが多かった。
しかし、生活のエリアを大きく変えた関係で、これまで聴いていた局が入らなくなった。
二度とあまり聴くこともないだろうと思っていたCDアルバムを持っていったのだが、車の中で、部屋の中で、再度聴くようになったし、また、同じ趣味の人から、様々な楽曲を教えてもらい、インターネットからダウンロードして聴いた。
今ならばインターネットで契約すれば、エリア外のラジオ局も聴けるようになる。
音楽に関していえば、むしろ聴く機会は増えているかもしれない。
音楽を、自分のものにして聴くやり方は時代により確かに変わった。

本はどうだろうか。
欲しい本が分かっている人にとっては、インターネット書店は便利である。
しかし、本に関していえば、やはり出会い方はそれだけでは難しい。
コンテンツだけでなく、「モノ」としての側面から人に及ぼす効果も大きく、それが一定量あって様々な角度や視点から提供されている場というのは、様々な形であって欲しいと感じる。
そして、そうした場に、本の情報を共有できる人がいることは必要だと思う。
本には人がつきものだから。

閉じたものであるようで、双方向性どころではなく、多方向に向かって、開いているものなのだから。

人々が、それぞれに必要な本を自分のものにしていく。
そのやり方について、いい方法が(ひとつではなく)、きっとあると思う。