セッション20

今回は相棒推薦図書。

タイトルで「面白そう」ってなった。

PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う

PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う

 

取り寄せないとないかなあと思ったら、いつも行く書店(大きめではあるけど大型店ではない)に1冊あって、嬉しかった。

実際に本自体も軽やかでポップ(帯も含めて)で読む前から期待度が高まる。

 帯に書かれた「公共空間の過度な活性化でまちは窮屈になっていない?」という言葉、「そうそう」と頷いてしまう。

 

いくつかある自分の関心領域のひとつに「公共:パブリック」がある。
公共空間で人がどのように過ごすか、そんなことをずっと考えてきているけれども「まちづくり」「賑わい」という言葉ではしっくりこない。

逆に、「まちづくり」を命題として活動している人たちのなかには、「公共」という言葉に反発を覚える人もいるらしい。なかなか難しい。

 

そんなパブリックを「ハックする」とは?

見返しに書かれた定義には

PUBLIC HACK【パブリックハック】

公共空間において、個人が自分の好きなように過ごせる状況が実現すること。賑わいづくりとは異なる、そのまちらしい魅力をもたらすアプローチ。

とある。

「PUBLIC HACK」は、公共空間が「私的に自由に使える」ようになることによって達成されます。(p.4)

しかも、ただ勝手に使うだけじゃなく、周りの人びとはその様子を受け入れている状況。

禁止やルールだらけの「みんなの場所」は、誰でも使えるはずなのに、誰にも使われない空間になってしまう。

 

常識から解き放たれる痛快な公共空間の使い方(しかし単にゲリラ的なだけではない)の実践例も豊富で、自分も体験したい、実践してみたいと意欲がわく、そんな気持ちになる。

中でもお気に入りは、「夕日納め」(p.39)。

今の土地で、特に好きな時間は夕日の出るマジックアワーなのだ。ここに来るまで、こんな空を見たことはなかったし、もう来て数年経つのにいまだに感動する。

そんな、大切に思っている行為に敢えて名前を付けてみることで、さらに開ける感じがして、不思議だ。

相棒は「クランピング」(p.58)をやってみたいらしい。想像すると、なんだかしっくりくる。

まちなかの人気のないスペースをディスコ化する「URBAN SPACE DISCO」も大胆なPUBLIC HACKだと思った。

URBAN SPACE DISCOはそれらのスペースに対して「穏便使用権」を行使し、まちを「二毛作」している行為であるといえます。(p.6)

まちを「二毛作」する。

時間帯によって一つの店舗で別々の人が営業する、というのは聞いたことがあるけれど、その行為の大胆さとあいまって、面白くておかしくて笑ってしまった。

 本書でためになったのは、そうしたゲリラ的な利用を行う際に、場所に関わる法律を確認しているところだ。

法律や条例を丁寧に読む解くことで、許可や手続きを受けないで行う「グレー」な行為を、白と言いきれるようになるという主張は、すごく説得力がある。

引用されたグラフィティアーティストのバンクシーの言葉がぴったり。

it's always easier to get forgiveness than permission(いつだって、許可してもらうよりも後で許してもらう方が簡単だ)

(p.98)

「グレーゾーン」への対応は、自らの視点のもちかたにもかかわることなのだと気付かされる。

 

まちを私的につかう人たちの集合体で、公共空間はできる。

「PUBLIC HACKの作法」として提示されたなかで、本書の肝ともいえる一節がある。著者自身も「突き詰めるとこの一言に尽きる」としている言葉だ。

「私」と「私以外の誰か」の両方を意識する。(p.113)

自分と自分以外の人がいることを忘れない。

思いやる、というほどでもなく、心にとめるくらいの感じでよい。

でも、それが小さいことのようで、ほんとうは大切なことなのだ。

 

まちを上手に使うにはデザインが必要だと感じている。

違和感なく、ここちよく、「みんな」を意識しながら。

 

ふと自分の周辺を見つめてみれば、まちはスキマだらけである。

 

もっといろいろ、HACKしていかないと。