18→19

 2018年はここ数年の中でも、特にたくさん音楽を聴いて、色々な本を読んだ。

環境の変化で「人に会う」ことが減ったというのもある。

それでも、それほど寂しい気持ちにならなかった。

どの作品も日々を送ることを支えてくれたが、なかでも印象的だったものを挙げてみる。

「本には人がつきものだ」ということの思いを強くした1冊。

没頭して一気に読み切って、その分エネルギーを消耗して読後は脱力する、という読書体験は久しぶりだった。

この本の元となったWEBでの連載もずっと読んでいたが、1冊の本にまとまって読んだ時に全く別物に思えた。そのことにまた、本というものの力を感じたものだ。

本を売りたいと思っている人が書いた本が売れる、という現象も凄いと思う。

「2018年の1冊」を選ぶとしたら迷わずこれだといえる。

  

天体

天体

 

夏頃から、主に夜のリラックスタイムにずっと聴いていた。

かつてない心地よさ。あまり季節も選ばないで聴くことができる。

季節感のある曲も好きなのだけど、いつでもぴったり心地よい、そんな存在があると安心だ。自分にとってライナスの毛布みたいな感じ。

いつでも あるようで すべては 変わりゆく

                 「わすれてしまうまえに」より

流れている旋律だけで十分心地よくて楽しいのだけど、 余裕があるときに歌われている言葉に耳を傾けるとしみじみといいなと思う。
乾いた魂にしみ込んでいくようだ。
 
サイレンと犀 (新鋭短歌シリーズ16)

サイレンと犀 (新鋭短歌シリーズ16)

 

自作の短歌をかわいらしいイラスト(安福望さん画)とともにtwitterで投稿されていて、 自分がフォローしているアカウント経由で知った。

ふとタイムラインに流れてくると、はっとする。

詩や短歌や俳句はSNSと相性がいいかもしれない。 不意打ちに出会って、世の中を見る目を変えるのにインパクトがあるから。

 

脳みそがあってよかった電源がなくなっても好きな曲を鳴らせる

 

どの歌もどことなく諦めというか、基本的にかなしみを湛えてる気がするのだが、そこに1筋の光を感じる。

日々を送るのにはこれくらいのほの暗い光の方がいいというような。

 

魔法が使えなくても (フィールコミックス)

魔法が使えなくても (フィールコミックス)

 

 コミックから。

これもtwitterで知った。

2018年のコミックと言ったらこれだけ読めばいいみたいな書き込みを見て、興味を持って読んでみた。

コミックを書店で入手することも今となってはなかなか難しい。発売から半年も経っていたら余程の人気作でない限り店頭にない。ところが、旅先で寄った地方の書店チェーンの店舗は1フロア全部がコミックで、この本も当然のようにあって、凄いと思った。この本を見るときっと、あの行きずりの書店を思い出すだろう。

作品の内容は、なんということもない青春の一コマのようだが、読み終わった後に突然ふと思い出されてくるという不思議な余韻のある作品だった。

白か黒じゃないよ。この世は♪ きれいな♪ ねずみ色〜♪

やりたいことが分からなくても、それでいいんじゃない、と堂々と言ってくれる登場人物はなかなかいない。そこに救われる。青春を過ぎ去った自分でさえそう思うのだから、真っただ中にいる彼ら彼女らはどれほどだろう。多くの迷える人に届いてほしいと思う。

 

こうして並べてみると、どれにも共通するものがあるなと思う。

永遠にとか、変わらないとか、そんな言葉にはもう励まされない。

忘れたりなくしたりしてもいいのだ。

流れていき消えていくものなのだ。

ものごとは変わっていってしまう。

そのことを受け入れ、肯定しているものに惹かれるようになった。

 

ものでも人でも「あの頃出会いたかった」と思うことがある。

きっと人生は違う方向へ向いただろう。

それは時が経った今だから分かるわけで、そのときは分からない。

遅かれ早かれ結局出会えたとしたら、それでいいのかもしれない。

いまは出会ってからの時間を 大切にしていきたいと思う。

 

このブログでのセッションは9回。

読み合う相手がいなかったら、1冊1冊をこんなに読み込めなかった。

ありがたい。こうして感謝の気持ちで1年をとじたことが嬉しい。

 

新しい1年がひらかれた。

本という扉をひらいた先に、また色々な世界を一緒に見ていけたらいいなと思います。