逃げる

5月がいつの間にか終わって6月に入った。

なんと早い。月日が逃げていく。

 

逃げるといえば、最近読んだ絵本がたまたま「逃げる」テーマだったりしたので、面白いなと思い取り上げる。

 

東京でバージニア・リー・バートンの展示が あったようだ。

www.kyobunkwan.co.jp

 

その展示に行った友人から『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』のマスキングテープをお土産にいただいたので、あらためて絵本を読み返してみた。

 

いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ)

いたずらきかんしゃちゅうちゅう (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

バージニア・リー・バートンは、『ちいさいおうち』や『せいめいのれきし』(いずれも岩波書店)で有名だが、この『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』も「きかんしゃ」という子どもの好きなテーマで人気の高い、代表作のひとつである。小学校の学級文庫などで置かれたり、図書館でおすすめ本としてたくさん購入するところもある。

 

表紙をめくると、絵本にしては珍しく、白黒の画面が広がる。

鉛筆デッサンそのままのような、荒削りな黒い線で描かれており、それが疾走感につながっている。

 

あるひ、ちゅうちゅうは かんがえました。

「わたしは、もう、あのおもい きゃくしゃなんか ひくのはごめんだ。わたしひとりなら、もっともっと はやくはしれるんだ。」

こうして、ちゅうちゅうは客車を置き去りにし、とにかく好きなように一人で走って走っていく。

 

あれっ、と驚いた。

ちゅうちゅうが逃げ、周囲が困る、というストーリーは記憶していたが、その前段としてのちゅうちゅうの「心の声」は覚えていなかった。

毎日の仕事がしんどいなと思っている大人が読むと、仕事の重荷、組織の息苦しさをすべて捨て「ひとりならもっとやれる」という考えがよぎる、そんな自分の気持ちが投影されていると感じるのではないか。

 

 

もう一冊は図書館の新刊コーナーにあった。

スムート

スムート

 

 タイトル通り、「影」が主人公である。

面白いことに、物語において、影にはスムートという名前がついているが、影の持ち主ともいえる「おとこのこ」には名前がつけられていない。

 

「おとこのこ」はどうやら消極的なタイプのようで、スムートが跳ねたり跳んだり、思い切り動き回りたいのに、そうしない。影は本体が動かないと動けない。ストレスがたまるスムート。

スムートは、7ねんはんずっとたいくつしていた。

つまらないほんのようなまいにち。

 

 「つまらないほんのような」という喩えが新鮮である。

 

スムートとおとこのことは、ほんのみぎとひだりのページみたいにはなれられない。

ここでも、本のページは離れないものという定義のもと、どうしても離れられないという状態を表現している。

 

ところがスムートは突然、本体のおとこのこから離れることができ、自由自在に好きなことができるようになった。

そうして、行く先々で別の「影」たちに会い、それぞれの希望を聞いていく。

 

ちゅうちゅうもスムートも、最終的には逃げっぱなしではない。

ただ、逃げたことでわかること、見えることもあるということをさりげなく教えてくれる。

 

自分もある場所・ある任務から逃げたのだった。

今はそのとき、逃げてよかったと思っている。