ドーナツの日に寄せて
6月1日はアメリカでは「ドーナツの日」らしい。
ドーナツはカリカリのオールドファッションか、ざりざりした砂糖をまぶした昔風のものが好きである(とはいえ布団のような低反発枕みたいな、ふにふにした食感のタイプもいけます)。
オールドファッションであればプレーンのものに半分だけチョコなんかかかってると、なおよし。
カジュアルなのにおしゃれ感があり、男女関係なく似合うおやつではある。
ドーナツ文学ってあるかなと思ってみたのだけど、ハルキムラカミ以外、思い浮かばなかった。特に「羊男」のイメージが強いのは、佐々木マキ画のインパクトかな。
ドーナツの短歌がある。
出会ってからずっと大事にしていて、折あれば開く歌集に収められている。
リブロ池袋本店が閉店する直前、店内に<ぽえむ・ぱろうる>という詩のお店が復活した。その歌集とは、そこで出会った。
リブロ池袋本店が閉店してもう3年も経つのかと思うと驚いてしまうが、きっと忘れないだろう。
ずっと自分のそばにおきたい一冊に、出会えた場所だから。
その一冊とは、歌人・堂園昌彦氏の『やがて秋茄子へと到る』(港の人)。
まず手触りが最高なのだ。
字面も大変美しい。余白が美しい。
もちろん、歌が美しい。
19歳から29歳までの、10年間に詠まれた歌である。
その中の「本は本から生まれる」という章に、その歌はある。
揉め事をひとつ収めて昼過ぎのねじれたドーナツを買いに行く
なんて恰好いいんだ。
「ねじれたドーナツ」だから、穴のないドーナツ。砂糖がざりざりのやつ。
この歌集は、章タイトル自体がまた別の歌のようでもあってそこも気に入っている。
愛しい人たちよ、それぞれの町に集まり、本を交換しながら暮らしてください
これも章タイトル。
座右の銘にしたいくらいである。
ちなみに池袋は全く生活圏ではなく、リブロは日常使いの本屋ではなかった。
それでもかけがえのない一冊に出会った。
そうした本と「出会わせる」力のある本屋がなくなっていくのはつくづく惜しい。